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「いる」=「おる」文化圏における敬語表現。

あるネット友達のとあるSNSでの日記を読んで、眼から鱗が落ちた。

彼女の日記に「「おられますか?」という間違った敬語の使い方をする人間が多くて困ったものだ…」との記述が!

わたしは、個人的には「日本語」や「言葉」と云ったことには厳しい方で、しかも、密かに自らの国語力にある程度の自信を抱いていると云うのに… ところが、この「おられます」に関しては、全くの盲点… であり、彼女の日記を読むまでは全く何の疑問も感じる事なく、正しい敬語(尊敬表現)であると確信していたのだ。 あまつさえ、それが何らかの問題を秘めた言葉遣いであると云う認識さえなかったのである。 

詰まり、この「おられます」は… 「いる」の意味の「おる」に尊敬の助動詞が付いた形で、自然な尊敬を表すの敬語であると理解していた訳である。

しかし、よく調べてみると確かにこの表現には問題がある様子… なのである。

前述のわたしの考え方と同じ意見もある一方で、「おる」は「いる」の謙譲語に当たる言葉であり、元来が謙譲表現であるのに、その言葉に尊敬を表す助動詞を付ける事、それ自体が誤りであり、有り得ない表現だ… という立場にたった意見があるのだ。 しかも、どうも、こちらの方が有力な説(定説?)であるらしい。


そ、そうなんだ?


個人的には、わたしの語彙の中では「おる」は、確かに、謙譲語的に使う言葉ではあるが、しかし、明確に謙譲語と云うものではなく、同時に「いる」をかしこまって云う言葉=丁寧語である、という認識なのだ。 

即ち「いる」イーコール「おる」なのである。

辞書(大辞林)に当たってみる。

見出し語で「おる」を探してみると、第一義として「人、動物が存在する。 そこにある。 また、そこにとどまっている。」とあり、その中に…

(ア)として「自分の動作を卑下したり(まさに謙譲)他人の行動を蔑んだりする気持ちの含まれる事が多い(これはまるっきり反対の意味だ)。時には尊大な物言いに用いられる事もある。」
(イ)として「「おります」で丁寧な言い方、「おられる」で尊敬の言い方として用いられる。」

…とある。

残念乍ら、日本語の辞書が一冊しかないので他の辞書での取り扱いを調べる事が出来ないのが残念なのだが、言葉の意味としてはかなり広範囲に渡っているし、用法も「これ!」という決定的なものがある様にも思えない。 恐らくは、多岐に渡る使い方をする言葉なのではないか… という推測が可能であり、その推測が外れてはいないだろうと思われる。

例えば「いる」に対する「いらっしゃる」は明確な尊敬語であるが、「いる」に対する「おる」が明確に謙譲表現であるとは言い切れない… と云えるだろう。

ところが、大方の意見では「おられる」は「いる」の尊敬語として不適切である、とされている。 これは何故なのだろう。 

ウェブで検索して見付けたあるサイトに以下の様な文章を見付けた。

---
 ただし、この問題には方言差も関与しているように思われます。実際私の方言では「いる」の代わりに常に「おる」が用いられるため、「おられます」は尊敬語としてなんら矛盾のない自然な表現として用いられています。
http://home.alc.co.jp/db/owa/jpn_npa?stage=2&sn=175より抜粋)
---

この文章では、「おられます」を「いる」の尊敬語とする事に関しては、矛盾をはらんだおかしな言い方… というスタンスなのだが、最後に上記の様な但し書きが付いている。


そうか…! 方言なのか…!


そう云えば…

面白い事に、わたしにとって、癇に障る「敬語の間違い」の中にこう云うものがある。

電話の受け応えなどで良く耳にした「誰々さん、おりますか?」というもの。
これは「おる」の丁寧な言い方「おります」を尊敬語と誤認している、完全なる誤りで、わたしは、常日頃この誤用を聞く度に…

「それを云うなら「おられますか?」だろ? 阿呆め!」

…と内心で思っていたのである。

しかし、思い返してみると、最近はこの「おります」と云う誤用には滅多にお目(お耳に?(笑))に掛からなくなったし、もっと良く思い出してみると「おられます」と云う言葉を耳にする事も無い様な…

そう… 思い出を手繰ってみると、何と何と驚くべきことに、東京に引っ越して以来、この類いの言葉を耳にする機会がめっきり減っているのである。

「おります」の誤用に目くじらを立てていたのは、甲斐の国にある以前の職場での事だったのだ。 

そうか! そうだよ! 日本には! 

「「いる」=「おる」文化圏」と
「非「いる」=「おる」文化圏」が存在するんだ!


わたしのお国言葉である甲州弁は、上方の言葉の影響を色濃く残しており、古いタイプのスタンダード言語に似通った表現の残っている言葉なのである。

関西では、明確に「いる」=「おる」である。(そう?)
代表的な「いる」=「おる」文化圏だ。(そ、そう?)
そう云う環境の中では、「おる」の尊敬表現としての「おられる/おられます」を使用する事は至極当然の事であると思われる。(前述の抜粋文の通り)

詰まり、山梨県(国中地方のみか?)は「いる」=「おる」文化圏にあり、従って「おられる/おられます」を、矛盾無く自然に「尊敬表現」として使用しているため、「おられますか?」と云う言葉に何ら違和感を覚えない… のではないだろうか…


ああ、良い勉強をした。(…と勝手な理論に納得してしまう。(笑))


皆様の地方ではどうですか?
もしも、宜しければアンケートをば…
2006年05月10日 | Comments(22) | Trackback(0) | 言の葉

「しかめつらしい」お話し。

このところ、言い間違い、覚え間違いについて、色々と考えていてある言葉を思い出しました。

その言葉は「しかつめらしい」。

翻訳小説を読んでいると(まあ、翻訳小説には限らないだろうけれど、個人的に翻訳小説しか読んでいないので)意外と頻繁にお目に掛かる言葉「しかつめらしい」。
これは、「堅苦しい」とか「もっともらしい」とか云った意味の言葉なのですが、意味的にも字面的にも「しかめつらしい」と誤用してしまい勝ち…

私が思いますに…

恐らく、日本の識字人口(つまり赤子以外の人間)のうち、約60%の人間がこの言葉=形容詞/しかつめらしいを知りません。 しかし乍ら、「顰め面」はほぼ100%周知の言葉です(多分)。 そして、何らかの偶発的事態により、「しかつめらしい」という言葉をはじめて見た人間は、それを理解するべく高速で働く脳回路の中で以下のようなフローを経験するはずなのです。

---
*「しかつめらしい」を活字で読む

1)先ず、正しく「しかつめらしい」と認識する。
2)その言葉を知らない
3)自分が知らない言葉なんてある筈がない。(プライドの法則)
4)無意識に近い言葉を探す。
5)…… 考え中 ……
6)……  !  ……

7)し、し、「しかめつら」!!!!!

8)そだそだ! これは、「しかめつらしい」と書いてあるに違いない。 誤植だ誤植。


「しかつめらしい」を
「しかめつらしい」と誤認。

---

しかも、「しかつめらしい」場面と云うものは「堅苦し」かったり「もっともらし」かったりするため、何とな?く、雰囲気的に「しかめつら」(笑)的雰囲気である場合が多く、感覚的にも誤認を助長する結果となり…

んで、「しかつめらしい」顔は「顰め面」として記憶の中枢海馬に蓄積され、長期記憶としてそのまちがった(?)映像とともにひっそりと残り…

そして、ある日、「しかつめらしい」に再び遭遇し、第二の思索に至るのです。

---

*「しかめつらしい」は正しいと信じる心。

1)「しかつめらしい」? 誤植だろ… 「しかめつらしい」… だよね?
2)でも… 考えてみると「しかめつら… しい」って変かもね? 
  言葉として… え? え? え? もしかして?
3)…… 大辞林中 ……
4)……  !!  ……

5)「しかめつらしい」は「しかつめらしい」だったのか!!!!! 


「しかつめらしい」に開眼。

---

「しかつめらしい」に開眼している人間の内、80%以上の人間が、以上のような思考経路をとっていると(私には)思われます。 だって、私がそうだから。(大爆笑) 

であるからして…

希望的観測ではあるが、これから先も、「しかつめらしい」に開眼する人間は微増の傾向にあると申し上げて間違いはないのではなかろうか?

---
更に考察。 

しかめつら = 眉の辺りを顰めた顔。

しかつめらしい は… 手近の古語辞典によると…

見出し語「しかつべ?ら・し」で、「しかつめらし」とも とありました。 この「べ」か「め」への転用(?)は「後ろめたし」にも当てはまるんですよ。 「後ろめたし」は「後ろ「べ」たなし」或いは「後ろ「べ」たなし」と表記されている例が多々あります。 しかし、年代による転用というよりは、音便的なものらしいです。 ですから、同時代に同じ様に使われ、意味の相違もありません。

しかし、しかつべ… ってなんだ?(笑)

---
調べてみました。
底本は「大辞林(三省堂)」です。

「しかつめらしい」「しかつべらしい」ともに見出し語とされていました。 やはり、「しかつべらし」が元の音であるのは間違いないようです。 「べ」から「め」への変化は、多分、音便的なもの。

見出し語「しかつべらしい」には、注意書きとして…

?然りつべくあらし の転か? とありました。

つまり… 然り+つ?べく+ある?らし(あらし)と分解すると… 確かにそのようであるという風であるらしい(あれ?)

品詞の分解は間違っていないと思うんだけれど、「つ?べく」の意味を上手く現代語訳に反映出来ません。 「確かに?そうなる」くらいの意味なんですが。 あ、「つ」は完了の助動詞です、た、多分。 

まあ、しかし… しかつべらしい(もっともらしい)説明にはなっていないですね。

---
因みに、完了の助動詞「つ」は…

連用形接続/下二段活用(て・て・つ・つる・つれ・てよ)
?した。 ?してしまった。 など、完了する動作、或いは、既に完了してしまった動作を表す助動詞です。
2006年04月26日 | Comments(0) | Trackback(0) | 言の葉
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