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今になって、筒井康隆を読むのこゝろ その参

これまでのお話し…

今になって筒井康隆を読むのこゝろ/その1(ふえるかんそーぶん)

今になって筒井康隆を読むのこゝろ/その2(ふえるかんそーぶん)


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私はついに、筒井康隆の短編集「にぎやかな未来」を通読した。 そして、私は自分が長年我慢してきたその歴史を無にしない為にも、筒井康隆の作品をより一層の熱意で探求することを決意したのだった。

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私が初めて通読した筒井康隆の作品集「にぎやかな未来」は一体、「筒井」を語る上でどういった位置にある物なのだろうか? 初版は昭和四十七年。 少なくとも、それ以前の作品を集めた物である事は確かなようだ。 「お助け」という商業誌でのデビュー作が収録されている所から見ても、やはり、これは、筒井康隆の最初期の作品集であり、まだまだ、「筒井」としてのカラーは薄いのだろう。 

ん?

あれ?

直接の関係はないと思うのであるが、一寸、思い付いた事がある。
私は、主に、洋もの=海外作品の翻訳小説を読んでいる訳で、そこには、翻訳者のフィルターが掛かっている事は周知の事である。 海外作家のデビュー作を読んで、その面白さに吃驚したりする事も多いけれど、それって、もしかして、「翻訳者によって文章が改善されている」ってことはないのだろうか?
原文の文章は不安定でギクシャクしていて稚拙な物なのだが、それが、「翻訳」という行程を経る事で、翻訳者の手腕によって流麗な文章に変貌を遂げ、面白さが増したり… なんて事があったりして?

そう云う意味では、国内作家の若い頃の作品って… 母国語で書いてあるが故に感じる「不慣れさ」「ぎこちなさ」がダイレクトに伝わってしまい、その事で損をしてしまっている?

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続きは後で。
これからご飯を食べるんだもん。

ご飯を食べたので再開。

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■【自選ホラー傑作集・1】「懲戒の部屋」 新潮文庫/¥438 ***+

この短編集は、皆様からのお薦めが詰まっているお買い得品。
「走る取的」「乗越駅の刑罰」「蟹甲癬」の三編が、お薦めされた作品。

自選短編集という事は作者のお気に入りと云う事だ。

傾向として、先ず、巻き込まれ系。
「走る取的」***+
「乗越駅の刑罰」***
「懲戒の部屋」**

大した事ではないけれど、何かイケナイ事(満員電車の中で動いた(!)とか)をしたと自覚した主人公が、どういう訳か何時の間にかその一寸した「罪」とは釣り合わないとんでもない事態に巻き込まれてしまうお話。 何故ここまでされなければならないのかが解らない、その解らなさが「通り魔的」な根源的恐怖感を煽る。 実際、こう云う事って今の世の中ならあるんじゃないかと思わせる… 時代が筒井の不条理に追いついて来ちゃった… 無条件で怖い。「懲戒の部屋」なんて、実際にこう云う目に合った人がいそうだ(拷問は別にして)。 しかし、こう云う残酷趣味は余り好きではない。

そして、グロ系。
「蟹甲癬」****
「顔面崩壊」****

筒井作品の真骨頂なのかな、この傾向の作品は私は好き。
かなり丁寧に読んでみたけれど、解剖学的な情景が浮かんで来て楽しい。 特に、「顔面崩壊」の淡々と書かれている崩壊の過程が良い。

更にノスタルジック系の作品。
「熊の木本線」*****
「近づいてくる時計」***+
「かくれんぼをした夜」*****
「風」*****

前回の「にぎやかな未来」で読んだ、「きつね」に通じる作品群だ。
日常の空間から半分だけずれた所にある異空間にふと踏み込んでしまった感じ。 センシティブでない人には解らない世界に敏感に反応してしまう人々のエピソードがいい。 何がヘンという事でもなく、事実そうなのかも知れないし、そうでないかも知れないし、後ろに誰かいるかも知れないけれど、いないかも知れない。 振り返った時に、図らずも観測してしまった時にだけ出現する恐怖一歩手前の感情と云うか。 「遠い座敷」なども、これなんだろう。 隙間を覗いちゃった感じ。 「風」は会話文だけで構成されていて、その会話から夫婦(?)の歴史と、風の中で玄関のドアを叩くモノの存在が想像されるかなり想像力を刺激されるお話し。 「猿の手」だ。 しかし、破壊的ではなく、寧ろ優しい。

最後に、SFチックなお話し。
「都市盗掘団」*****

現実とは違うけれど、ほぼ現実的な不思議な世界観…。
結末は、やはり想像力を掻き立てる、行間に意味のある感覚。 一見普通のゾンビ話なのだが、もっと大きな世界観を構成する一部分なのじゃないかと、そんな半分異世界な空間の広がりを想像させるような大きさを感じさせるお話しである。

悪ノリの過ぎるものに感じる嫌悪感はぬぐい去れないが…
確かに「筒井康隆」は…


更に検証を続ける。
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