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アリンコとアリンド

切っ掛けは忘れたが、同居人のハスヨスさんとイームズの椅子についてあれこれと話していた。

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ねえ… アリンコって、云うよね?

へ? ああ、アリンコね、云うよ、アリンコに似てるから、アリンコチェアって云うんだよ。

うん、いや、椅子じゃなくて… 「アリンコ」って言葉ってさぁ…
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そう… あのアルネ・ヤコブセンの名作、セブンチェアの前身… その椅子の一体成型された背のくびれが、あたかも蟻の胴体の様に見える事からの呼び名である。 

椅子のお話しをしていて「アリンコ」という言葉が出たら、アリンコチェアの事だろう、と判断して当然なのであるが、ハスヨス氏の思考は既に、違う方向に進んでいるようである。 


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昔さぁ、元の奥さんがさぁ。
おかしいって云うんだよね、「蟻」のことを「アリンコ」なんて云うなんて、おかしいって。 それで、それを云うなら「アリンコ」じゃなくて、「アリンド」だって…

え? 君も? 君も「アリンド」って云う? 

云いますよ、「アリンド」。
否、寧ろ、「アリンドウ」かな。

でも、勿論「アリンコ」とも云うし、その言葉がおかしいとか、知らないとか、ということはないけれど。
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ハスヨス氏の元奥さんの故郷「寒川」の方言では「蟻」は「アリンド」であり「アリンコ」ではないのだとか。

私の故郷の甲府盆地でも「蟻」の事を「アリンドウ」と呼称する。 神奈川の田舎地帯である寒川とか、静岡でも山梨よりの地方では方言として似た様な言葉が残っているのに驚く事がある。 基本として、地の利が今一歩の山の中に取り残された地域では、日本語としても古いものが方言としていにしえの姿を留めている事が多く、近畿地方の言葉との類似も見られるのである。

私の認識(=甲州弁)では…

「アリンドウ」は「蟻の集合体」。 それに対して「アリンコ」は「一匹の蟻」

…かな。

「アリンドウ」=「蟻んとう」=「蟻達」=「蟻」に対しての蟻の複数形(?) 

これは、「お前」という言葉の甲州弁変換でも見られる現象。

「オマントウ」=「お前んとう」=「お前達」=「お前」に対してのお前の複数形

って感じ?

しかし、よくよく聞いてみると…


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ううん、違うよ。
寒川じゃ、「アリンド」は「一匹の蟻」を指してそう云うんだよ。
だから、一匹の蟻が「アリンド」で「アリンコ」はおかしいって…

ふ?ん。

でも、そう云えば、蟻が一匹だけいた時も「アリンド」って云う事もあったかも知れないな。 でも、意味としては「蟻の集合体」の事なんだけどな…

意識していなかったけれど、如何してだろう?

あ! そうか!

「アリンドウ」は「蟻の集合体」じゃなくて「種」としての「蟻の一族」の事なんじゃない!?

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以上、イームズの椅子から「アリンコ」と「アリンドウ」のへと至る、違いの解るお話しでした。


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この記事は、某所にて既出のものです。
その際に、色々と有益なコメントを戴いており、勿体ないので、そのコメント部分も合わせて再録したいと思います。 しかし、無断です。(すみません)


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■そんぴ様よりのコメント

ありんどう>
 「種族を示す語」物質名詞の一種という解釈ですね。甲州弁としても「どう」ですから「蟻たち」を示す「蟻ん党」とは違うのかも知れませんね。むしろ「あきんど」の「ど」に近いのかも。あの「ど」は「商人」の「人」の部分で「商いをする衆」の「衆」に近い気がします。それって物質名詞に近い感じがします。
 「単数」と「複数」というより「特定の個体(an ant)」と「種族全体(the ant)」なのかも。裏づけはありませんが僕もそれ、支持。

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■いぬかわ様よりのコメント

子どもは一人でも子“ども”,関西の年配の方の言葉では「お子“たち”」。これと似たようなものではないでしょうか。うじゃうじゃ群れてるのが普通,という生き物の呼称。
fish, sheep といった英語の単複同形名詞(これまた群れでいるのがデフォルトの動物たち)の逆ですね。
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2006年07月08日 | Comments(0) | Trackback(0) | 言の葉
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