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2010003/夜がはじまるとき(ネタバレ)

■2010003
■夜がはじまるとき
 著 スティーヴン・キング
 訳 白石 朗ほか
■文春文庫
■****

夜がはじまるとき (文春文庫)夜がはじまるとき (文春文庫)
(2010/01/08)
スティーヴン キング

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キングの最新短編集。
分冊での出版だったので、既出の「夕暮れを過ぎて」(7編収録)と、この「夜がはじまるとき」(6編収録)を合わせて漸く完結… ということになる。 待ち遠しかったね。

最初(あ、最初じゃないか?)は「N」。
これは、ラブクラフトの「クトゥルー神話」を背景とした作品… らしい。 「らしい」というのは、私が個人的に、クトゥルー神話関連のものを意識して読んだ事がないからなんだけれど、お話としては、特にクトゥルー神話について知識がなくても理解出来るので問題はない… と思うのであった。 往復書簡や新聞記事の記録、Eメールの抜粋などで構成された、最初の犠牲者から連綿と繋がる得体の知れないものを阻止する役目を果たさなければならなくる人々のお話。 誰かの「記憶」が「情報」によって伝播し実際の「行動」に移ってゆく様が何ともリアル。

しかし… ラブクラフト関連には詳しくないんだけれど、何で「クトゥルー」って云う言葉で統一しないの?

読んだ事はなくても、ホラージャンルに興味が有れば誰でも(私も含めて)、ラブクラフトの「ク・リトルリトル」&「クトゥルー」という一連の思想(?)について、名前だけは知っている筈だと思うんですよね。 そんで、その色々訳されている言葉が、人間には発音出来ない言葉だってことも一応知識としてはあるんです。 でもですよ。 ラブクラフトが書いた「クトゥルー」の綴りっていつも同じなんじゃないのかな?? って思うんです。 同じですよね? だったら、「読めない」ってのは解りますけど、便宜上、「ク・リトルリトル」か「クトゥルー」かに統一したら良いんじゃないかと思うんです。 だって、混乱するじゃないですか、新しく読もうと思う同胞が! 
勿論! 国書が提唱する「ク・リトルリトル」と創元が提唱する「クトゥルー」(そう? 間違っていたら指摘して下さいませ)は、既にもう長年の敵対関係(?)にあるわけで、それを統一しろとは云わないけれど、後発の場合はその限りではないのではないでしょうか? 

だから、この場合も、いきなり「くとぅん」なんていう新語(?)を作るのではなく、素直に「クトゥルー」賭したら良かったのではないか… そんな風に思うのであります。 

如何でしょう?

 この件に関しては、その後、色々とご教示いただき、自分の浅はかさに驚きました。
 その顛末はこちら…


次が「魔性の猫」。
これは、アンソロジーで既読。
映像化されたものは観た事がないので、観てみたいような… そうでもないような。
こう云う、一寸、派手系の華のある短編って、昔のキングの短編を彷彿とするので、好みです。 ああ、このお話自体が、大分以前に書かれたものだから、か。 うん、そうだ。

そして、「ニューヨークタイムズを特別割引価格で」。
これは、哀切極まりないですね。 もう二度と彼から電話がかかってくる事はないんでしょうか… 
凄く短いお話ですが、記憶に残ると思います。
先に出ている「夕暮れを過ぎて」に収録されている「ウィラ」に似た余韻が残ります。

4番目に「聾唖者」。
教会に告解に来た男が語る、あるヒッチハイカーとの旅の顛末とその所行。
このお話に出てくる3人=男、ヒッチハイカー、神父様のそれぞれが、それぞれに正直で感謝の気持ちを忘れていないところがとても良かった… 復讐を遂げてくれたこのヒッチハイカーはもしかしたら因果応報の神様だったのかもしれません。 

5番目は、この本の中でのお気に入り「アヤーナ」。
こう云う宿命を負わされた人は凄く不幸だと思いますが、このお話では、最終的には解放されるので…  
例えば、私がキング作品の中で実は一番怖い作品なんじゃないか… と密かに思っている「グリーン・マイル」のように、愛する人が死ぬのを目の当たりにしながらいつまでも生き長らえなければならなかったり、他の人を癒さなければならなかったり、というのは究極の責め苦じゃないかと。 

最後に… 問題の「どんづまりの窮地」。 大幅にネタバレします。

これはね… 駄目でしょ。(あくまでも、私見)
もしかして、キングったら、汲取式の便所に入った事が無いんじゃないのか? と疑いました。

雪隠詰めの恐怖が全然、全く、真に迫ってこない…
こう云うことって、キングの紡ぐお話の中では珍しい! 畳み掛ける筆致で現実感と非現実感をないまぜにするのがキングの真骨頂なのに!

そもそも、排泄物にまみれる恐怖って、その臭気もですが、寧ろ「汚さ」に有るんじゃないでしょうか? 「汚さ」に依って、感染症や中毒や、命に関わる不具合が生じる事こそが「恐怖」なのでは?
それなのにこの小説の中では、工事現場の簡易トイレに閉じ込められた人物が、「汚さ」に対して「恐怖」を感じていないんだもん! 臭くて、暑くて、嘗てトイレットペーパーだったものがこびり付いているのが見えて、そして? 何で、そんな汚穢の中で、自分の身体に傷を付けるような行為をして平気なの? 蟲は? ゴキブリが一匹いるだけ? 身体に付着した汚物が乾いたら? 身体が痒くなったりしないの? 感染症は? 心配じゃないの?

そう云う事を想像させるような一文があって然るべき! だと思うんだけれど。

それに、脱出してからも…

特に綺麗にする努力をした後でもないのに、冷蔵庫の水をぐびぐびと飲み干したり!
→うわあ! そんなことするなよ、汚物も一緒に飲んじゃうぞ! お腹がぴーぴーになるぞ!

汚れた身体にそのまま纏った(そうだよね?)オーバーオールを、雨のシャワーで洗い流した後もまた再び着用したり、その上、ホットタブに入った後もまた! 
→うわあ! 折角(少しだけでも)綺麗になったのに、その糞まみれになった服をまた着るんかい!
 しかも、「気に入ったから着ちゃおう」とは何事だ!

お手伝いの女性が何で、異臭に気付かないんだ!
→汚穢の中に数十時間(?)いたら、そんなに簡単に臭いは消えないぞ!

それとも、欧米の人って、汚物に対して免疫がある(=汚いものだと思っていない?)のかな?
不潔な環境のなかで起こったペスト禍で苦しんだ過去だってあるのに?


とにもかくにも、そう云う細かい事が気になっちゃって、楽しく読めませんでした…

ねえ、スティーヴン…
あなた、ホントに、汲取式のトイレに入った事ないんでしょ。
わたしなんて、中学の頃まで、家のトイレが汲取式だったのよ… その臭いったら…
それを汲み取る時の、目にしみるような臭気ときたら…

あ、あ、あ、あなたの書いたこのお話… 
こ、こんなのは、う、う、嘘よ?!

ユイーは、そう云い捨てて、走り去るのであった。

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2010002/心から愛するただひとりの人

■2010002
■現代短編の名手達6 心から愛するただひとりの人
 著 ローラ・リップマン
 訳 吉澤康子他
■ハヤカワミステリ文庫
■評価 ****

現代短篇の名手たち6 心から愛するただひとりの人(ハヤカワ・ミステリ文庫)現代短篇の名手たち6 心から愛するただひとりの人(ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2009/11/30)
ローラ・リップマン

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ふえるかんそーぶん 心から愛するただひとりの人
 http://unyue.blog63.fc2.com/blog-entry-1697.html
 http://unyue.blog63.fc2.com/blog-entry-1699.html
 http://unyue.blog63.fc2.com/blog-entry-1701.html

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現代アメリカの病んだ心を写す実力者(帯より)… ローラ・リップマンの初読です。

うん、確かに、病んだ女性のお話。
それぞれの短編の感想は、上記URL、ふえるかんそーぶんでご確認ください。

語り口が、軽やか… っつーか… 客観的なのが良いかも。
女の怨念がおどろおどろしく的なウェットな書き振りだったら、辟易しちゃう題材だから。 適度なユーモアも有り、特に、「ブラックアイドスーザン」と「靴磨き屋の後悔」が好きですね。
例えば、ダフネ・デュ=モーリア的でありながら、彼女よりも軽やか… と云った感じの個性でしょうか。

長編が何作か有るようなので、機会を見て読んでみたいと思います。

2010001/100年予測

■2010001
■「100年予測 世界最強のインテリジェンス企業が示す未来派遣地図」
  著 ジョージ・フリードマン
  訳 櫻井祐子
■早川書房
■評価 ★★★☆☆


100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図
(2009/10/09)
ジョージ フリードマンGeorge Friedman

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2010年というキリの良い年の年頭に読む本として相応しいのではないか… と思い読んでみた。(実際には、2010年というキリの良い年を迎えるのに相応しい… と思い、正月までに読了するつもりで暮れから読み始めたんだけれど。)

歴史には、10年20年単位でも驚くほどの変化があり、今現在、荒唐無稽に思える状況も20年経てば日常になる事もあり得る。 然り、ご尤も。 

確かに、今から20年前 …とは云っても既に働き始めており、今と同じ仕事を新人として勉強していた頃であり、記憶も新しく、どういう暮らしをしていたのかもはっきりと思い出せる「若かりしあの頃」なのだが …インターネットも一般的ではなかったし、会社の業務にコンピュータも殆ど取り入れられていなかったし、携帯電話も珍しかったし、殆ど何も変わっていないようでいて、実は、依って立つ所自体がとんでもなく変わっていて、例えば今の日常の情景を、20年前に「20年後はこんな風になっているんだよ」と未来から来た信頼出来る情報源から教えられたとしても、一体どういう風なのか想像もつかないかも知れないよね、と思うにつけ、この本の一種SFチックな飛躍にもそれなりに寛大な気持ちになれてしまうのである。

しかしながら、特に後半部分の「第3次世界大戦」の詳細予想の部分に入ると、まさに、一寸した「SFのプロット」っつーか「長大な戦記SFの粗筋」っつーか… 宇宙からすべてを牛耳る「バトルスター(!)」と「装甲騎兵(!)」(人型ロボットは効率が悪かろうに!)そんで、それを動かすのに電気が必要なもんで、コンセント争いが勃発! …趣きは大分違うけれど、オラフ・ステープルトンの「最初にして最後の人類」を読んだ時のような物憂い(?)気分になってしまったのであった。 そう云う意味で、私見ではあるが、後半読み進むのが一寸苦しいと思う。 それもまた、自分自身の想像力が著者のレベルまで到達していない事が原因なのかな… とも思うけれど。

この本に寄ると、今世紀は「アメリカの世紀」だという。

現在、これだけの危機的閉塞感を世界中にまき散らしているのがアメリカとアメリカンスタンダードと云う名の各種アプローチ方法なんじゃないの? =アメリカ方式はもう終わりなんじゃないの? という空気が蔓延しているんじゃないの? 思うんだけれど、今世紀はアメリカが漸く「子供の期間」から脱して「成熟した大人」になり「文化を確立」する時期なんだそうな。 若い国だし、そうなのかも… でも、この著者の論には、紛う事無いアメリカ贔屓の匂いがするのも否めないのである。 まあ、母国を贔屓目にみるのはアメリカ人としては当たり前か?(その点、日本人は、自虐傾向が強いよね?)

とにかく、アメリカ一国が独占的に覇権国家として君臨する中で、ロシアや中国は内部の事情で自滅し分裂の憂き目に遭い衰退、アジアの雄は日本&トルコ、ロシアの影響力が薄れた後のヨーロッパの覇権はポーランドがそれぞれ握るのだそう。 軍国化した日本はトルコを巻き込んで、また性懲りも無く奇襲攻撃でアメリカに挑み、勿論敗退… と続くのだけれど… またしても、自ら進んでアメリカに戦争を仕掛けるほど日本は馬鹿なのか? うーん… そうは思いたくないね。

しかし! この本の前半はとても納得出来るのです。

特に、現在勢いに乗る中国が結果的には世界的国家にはなれないだろう… とする、著者の予測には大賛成なのである。 中国の驚異的な言説がここのところ何年か盛んに云われているけれど、多分、中国が本当の意味で秩序を持った強国になる可能性って低い気がする。 SPA企業の一員として、中国を生産拠点としたモノ作りを側面から見聞きする事も多いけれど、聞けば聞くほど疑問が湧いてくるもん。 それに、やっぱり、とてつもない貧富の格差があり、多様な民族が寄り集まっているわけで、そう云う事情から考えても、いずれは空中分解しそうだもん。 

という訳で、長々書いてしまいましたが、最終的には…
面白くもあり、そうかと思へば、そうでもなく、ってな感じでしょうか。

「99999」*****

「99999」
 
著/デイヴィッド・ベニオフ
訳/田口 俊樹
 
評価/*****

99999(ナインズ) (新潮文庫)99999(ナインズ) (新潮文庫)
(2006/04)
デイヴィッド ベニオフ

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格別で、朗々と、美しく…。
と帯に唱われるのが理解できる作品集。

凄いね。
表題作も良かったけれど、わたしが良いと思ったのは、新兵の話… それから、ゲイのカップルの話、そして、貯水池の話… かな。

前作「25時」もよかったけれど、この切れ味をみると短編向きの作家なのかもしれない。 しかし、残念なことに、ベニオフは今、映画に夢中… らしく、新作の予定もないらしい。

実に勿体無いのである。
お薦め。

「第二の顔」****

「第二の顔」
 
著/マルセル・エイメ
訳/生田耕作
 
評価/****
 
ユーモアもあり、思索的でもあり、馬鹿馬鹿しくもあり、哀しくもある。
 
醜男だったのに、ある日突然に良い男になっていたとしたら?
多分、全然嬉しくない。
主人公も、勿論、全く嬉しくなく、一体この先どうしたら? と悲嘆にくれるが、それはひと時の事。 次第に、その「良い顔」に相応しい考え方や態度やその他色々な欲望が鎌首を擡げ、しかし、自分の中にある「醜い顔」の良心がそれを押さえにやって来て、彼は心の中でいつも葛藤するのである。
 
外見は、実は内面が作るものなのか?
それとも、内面は、外見からの影響を逃れられないのか?
レッテルを貼っているのは、周囲の人間なのか?
それとも、自分が自分にレッテルを貼っているのか?
内面が変わるから外見も変わるのか?
外見が変わったから内面も変わったのか?
 
鶏が先か、卵が先か… なんだろうね、結局は。

「死の開幕」*****

「死の開幕」
 
著/ジェフリー・ディーヴァー
訳/越前 敏弥
 
評価/*****

死の開幕 (講談社文庫)死の開幕 (講談社文庫)
(2006/12/15)
J. ディーヴァー

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1月9日、読了。

驚きの面白さ、である。
期待していなかっただけに、より面白く感じたのか…?
気に入ったので、5つ星。

初期段階で既に、これでもか!とばかりの作物で、しかも巧緻に長けているっつうのも驚きだが、最近のディーヴァーの作品に感じる無理やり感がなく(良く考えるとやはり騙しか?(笑))、思わず異を唱えたくなるような嫌らしさ=あざとさがないのが良い。

犯人と直感した人物はやはり犯人だったが、ストレートに「犯人」だとは云えず、しかも最後には…
ううむ、そう来たか…

色々な意味で「騙し方」が上手いのである。

「切り裂かれたミンクコート事件」****

「切り裂かれたミンクコート事件」
 
著/ジェームズ・アンダースン
訳/山本 俊子
 
評価/****
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切り裂かれたミンクコート事件 (扶桑社ミステリー)切り裂かれたミンクコート事件 (扶桑社ミステリー)
(2006/11)
ジェームズ アンダースン

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あのなかなか面白い昔ながら(?)のミステリ小説「血染めのエッグコージィ事件」の舞台となったオールダリー荘でまたしても事件が!
 
何と云ってもこのシリーズ… 探偵役(刑事だけれど)として登場するウィルキンスがいい! アントニィ・バークリーの生んだ迷探偵ロジャー・シェリンガムは自信過剰で時に失敗もしちゃうというけれん味たっぷりの面白い存在だけれど、このウィルキンスは謙遜に謙遜を重ねて、終止控えめな態度なのに、実のところは何もかもお見通し。 快刀乱麻なのである。 愚鈍を装うその韜晦ぶりが楽しい。 ここ迄謙遜するのは嫌味なような、いやいや? これは慇懃無礼を通り越して、もしかしたら本気なのかも? と実に愉快な気分になれるのである。
 
今回は、前回の事件とは違って完全なる主役として古典的謎解きの場面も決まっている。 
 
そして、バーフォード卿の執事メリーウェザーも見逃せない。 とてもいい味を出している。 執事の中の執事、ジーヴズにも負けない采配で最後に爽快な印象を残すのである。 こういう本は読んでいて気分が良くなるね。
 
その他細かいところでも、例えば、クリスティの小説内小説家で、林檎が大好きなアリアドニ・オリヴァー夫人の名前がさり気なく出て来たり、狂言回し的な存在として最終的には笑い者になるオールグットの名前に並んで「3グレートAと称される…」として紹介されるのがアプルビィだったり、とミステリ好きには堪らないくすぐりも満載なのである。
 
お薦め。

「問題な日本語・3」

「問題な日本語・その3」
 
著/北原 保雄
 
評価/星評価外 
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問題な日本語その3問題な日本語その3
(2007/12/05)
北原 保雄

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うーん。
もうこれはこれ以上は読まなくてもいいかな。
 
問題なのは…
問題のある表現を色々と解説する中に、それこそ問題な日本語を堂々とお使いになっておられる事であろうか。
 
こんな事を書いてしまい「申し訳ございません」ね、否、ホント。

「バタフライハンター」***

「バタフライハンター 10のとても奇妙で素敵な仕事の物語」

著/クリス・バラード
訳/渡辺佐知江
 
評価/***
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バタフライハンター 10のとても奇妙で素敵な仕事の物語バタフライハンター 10のとても奇妙で素敵な仕事の物語
(2007/11/08)
クリス・バラード

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ごめん… あんまり面白くないよ、この本。 だって、ここに紹介されている10のお仕事の殆どに対して、それ程、素敵な仕事だとは思えなかったんだもん。
 
それぞれのお仕事に対して興味が湧き難い書き振り… っつーか。
わたしには、この作者の方のそのお仕事に対するアプローチ方法が一寸平凡で退屈なものに思えちゃったというのが本当の感想… かもね。 まあ、この本の趣旨としては、なぜその人がそう云う特殊な職業に就いたのかとか、その特殊な職業をその人自身がどう思っているのか… が主眼なんだから、こう云う風になって然るべきナノかも知れないんだけれど、個人的には、それぞれの仕事の特殊性について掘り下げてある事を期待しちゃったからかな。
 
でも、表題にもなっている「バタフライハンター」の章(因みにこれが最後の章)はとても面白かった。 多分、「バタフライハンター」と云う職業に対して、私自身が… 私自身のメンタリティに於いて、共感することが出来たからなんじゃないかな。 それに、そこに行き着く前に読んだ9種類のお仕事に従事する9人の人々の、その人となりに魅力を感じることが出来なかったんだけれど、「バタフライハンター」氏には好感を覚えた事も大きいかも。
 
ところで、最後の章で…
バタフライハンター氏の宗教観に関する記述の中で引用されているある植物学者の言葉なんだけれど、訳が一寸ばかり不適切なんじゃないかな… と思われる部分があって、何だか気になった。 
 
それはここ。
317ページ8行目からの鍵括弧内?「英国の生物学者J・B・S・ホールデンは、神の概念を尋ねられて、『神はカブトムシに格別好意を持っておられる。 カブトムシはほかのなによりも種が多いから』と答えたよ」?(?以下?まで引用)。
 
これを訳すなら「カブトムシ」じゃなくて「甲虫」だろうよ。 ねえ?
これじゃ、世の中にさ、あの角のある子供が大好きなクワガタと競わせておもしろがる、所謂「カブトムシ」が種としてものすげえ栄えているみたいに感じるじゃねえかよ。 
 
こう云うところで転けないで欲しい。
細部にこだわってこその翻訳だろうと思う。

横溝正史翻訳コレクション

横溝正史・翻訳コレクション
「鍾乳洞殺人事件」
 
著/ウィップル/ヒューム
訳/横溝正史
 
評価/***

横溝正史翻訳コレクション 鐘乳洞殺人事件/二輪馬車の秘密―昭和ミステリ秘宝 (扶桑社文庫) 横溝正史翻訳コレクション 鐘乳洞殺人事件/二輪馬車の秘密―昭和ミステリ秘宝 (扶桑社文庫)
D.K. ウィップル、ファーガス ヒューム 他 (2006/12)
扶桑社
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横溝正史が翻訳した探偵小説「鍾乳洞殺人事件/二輪馬車の秘密」。
 
横溝正史が作家生活のスタートラインとした、雑誌「新青年」に寄せた翻訳小説を元に文庫化したものであるらしい。 後書きを読むと、何と、横溝は翻訳する時にかなり大幅な改作(?)を行っているらしい。
彼にとって「もたもたしている」と思われるエピソードや文学作品からの引用、それから背景描写からサイドストーリーなんかをばっさばっさと切り取って再構成し、すっきりはっきりとさせているのだとか。 それから、彼が見て「長過ぎる」と思われる登場人物の名前を変えてしまったりなど、やりたい放題なのだそうな。
 

「鍾乳洞殺人事件」

これは、なかなかいい。
古い翻訳小説にありがちなギクシャクした文章ではなく、敬体を使った柔らかいイメージの文体で、読みやすい。

比べるのも何だけれど、なんか、ちょっと「恐怖夜話」っぽい… ような気がして笑ってしまう。
 
女性が語り手であることが、この文体を選んでいる理由なのかな?
 

「二輪馬車の秘密」
 
この作品が、問題の改作なんだって。
後に本として出版された際のほぼ原作に忠実なヴァージョンと、「新青年」に掲載された際の再編集ヴァージョンが収録されているのだが、まあ… どうなのかな… 解んない。(笑)
 
ところで、横溝作品。
こういった、海外の探偵小説に着想を得ている部分も多いらしく、そう云われてみれば、この作品の中にも、「妾腹の娘と本家の娘」のエピソードとか、「身代わり/成り代わり」とか… 横溝正史の作品に良く出て来るエピソードが垣間見えるような気もする。
 
内容的には、特に面白いと云うわけでもないけれど、横溝正史がなるほどそれなりに優秀な翻訳家であったんだな? ということや、ストーリーテリングのルーツについてに一寸だけ触れる事が出来て、その点でなかなか興味深い本だった。
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